
はなの声(再掲 0'10")
猫のはなちゃんが他界したとき、側に居られたのは、せめてもの幸運だと思いました。でも、あれから8日が過ぎて、幸運もあるけど、何よりはな自身が、私が家に居る日を待っててくれてたんじゃないか、と思うようになりました。
そう思う根拠が3つあります。
ひとつめの根拠は、確率です。
私は夜勤専門の仕事で、家で夜を過ごせるのは4日に1回しかありません。この時点で、私がはなを見送れる確率は 25% です。
そしてふたつめの根拠で書く通り、亡くなった「休みの晩の20時」というのは、はなと過ごせるいちばん長い時間が決定する時刻でした。4日間を1時間づつ刻んだ 96時間の中でも、お別れの時刻としてこれ以上の時刻はありません。そこにはなの意志のようなものを感じます。私は翌日夕方の出勤時刻まで、はなと最後の時間を大切に過ごすことができました。
ふたつめの根拠は、20時に、はなが「これ以上ない」時刻になったことを、多分認識可能だったことです。
私は下記のような4日単位のシフトパターンで勤務しています。
1日目:朝起床、 洗濯、はなと昼寝、15時出勤
2日目:9時帰宅、洗濯、はなと昼寝、15時出勤
3日目:9時帰宅、洗濯、はなと昼寝、17時出勤
4日目:7時帰宅、はなと昼寝~午後起床~夜自宅ではなと就寝
休みでない日は遅くとも17時には家を出発して、そのまま次の朝まで帰りません。20時に私が家に居るということは、その晩は私は家ではなと一緒にずっと過ごせるということです。
もちろん猫のはなが人間用の勤務予定表を読める訳はないでしょうけれど、経験的に
「夏缶ちゃん(私)がいま(20時)家に居るなら、明日の夕方までずっと一緒に過ごせる」
と分かっていたと思います。
20時になって、私が家に居ることで安心したのか、自分が亡くなった後も私とできるだけ長い時間一緒に居たかったのか、それとも私に見送らせてあげようと思ってくれたのか、いずれにしても、それははなの私に対する愛情だったと思います。
みっつめの根拠は、はなの体力が本当に底をついていたことです。
はなは慢性的な低血糖で、かかりつけの獣医さんによると「ありえないくらい低い」そうです。
1年くらい前から、月に1回ほど発作を起こして、嘔吐と荒い呼吸に見舞われてきました。
3月くらいからは定期的に点滴をするようになり、発作は起こらなくなりました。亡くなる3日前にも点滴を済ませたばかりで、私は安心し切っていました。
でも、最後の発作が起こった瞬間、私は「これはいつもの発作だ。だけどこれまでのように回復する余力がない。」と直感しました。
嘔吐といっても吐くものがほとんどありません。そして呼吸はいつもと同じ荒れ方ながら、それを支える体力が全然ありませんでした。
亡くなるまでの時間は1分くらいだったと思います。
私はどうすることもできず、ただはなの顔を手のひらで包んで、呼びかけ続けることしかできませんでした。
そうなってまで、ぎりぎりまで、はなは私が家に居る日を待っててくれた気がします。
亡くなる日の朝、勤務明けで帰ってきた私は、明るい日差しの中で、はなと昼寝に入りました。
いつもの通り、私の左腕を枕にして(重い~)、顔と顔をつき合わせて短い会話を交わしました。
いつもより小さく短い声で、2往復半の短い会話でした。これも今にして思えば、体力が底をついていたからなのでしょう。
でも、それでも、はなの声は、私への信頼と愛情でいっぱいでした。
昼ごろに起きて、またはなと遊びました。抱っこしてあげると本当に嬉しそうにしていました。
その日の午後、私は出掛ける予定でした。
取手市内の床屋に行って、日暮里の銀行に行って、上野の自転車屋へ普段&通勤用の自転車を見に行く予定でした。
でもまあ何となく、いつもの通り、自宅でのんびり過ごすことになり、はなの横に座ってネットで自転車をあれこれ検討していました。
もし、このとき本当に出掛けてたら、私ははなの最後に立ち会うことは出来なかったでしょう。
こればかりは、何が知らせたということもなく、ただの偶然ですが、もしそんなことになっていたらと思うと怖くて仕方がありません。
私を待ってくれたはなにも、私を立ち会わせてくれた神様にも、心から感謝したいと思います。
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この8日間をかけて、私ははなとの思い出を整理してみました。
写真も声も、あらためて、はなが私をどれだけ信頼し愛してくれてたかを確信させてくれました。
いまひとつの夢を持っています。
ある日、街角で子猫が私に声をかけてくる。
姿は少し違うけど、私はそれがはなの生まれ変わりであることを直感する。
「はなちゃん」と呼ぶと、彼女は私の胸に跳びついてくる。
18年前、初めて町田市で出会ったときと同じように。
そして、私たちの新しい一緒の時間が始まる。
・・・いつになるか分かりませんが、そんな日を心待ちにしています。
(つづき→)黒猫のなみちゃんがうちの子になるまで
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ペットの不思議な側面を書こうと思ったのですが、思わず長文になってしまいました(汗)
最後までお読み下さって、本当にありがとうございます。
もう少し書きたいことがあるのと、はなちゃんのお留守番シリーズも予定しています。
野外録音も細く長く続けて行きますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。